A murmur of Kai

今年のモットー「挨拶はした者勝ち! 相手の為ではなく、自分の為!」

 

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北白川へ行こう! 

有栖川有栖の新刊「火村英生に捧げる犯罪」読んでました。通勤電車の中で。ふと、顔を上げると、斜め前で、男の人が読んではる冊子が目に入りました。ページの端に見えたのが「北白川」の文字列。どうやら、京都の観光案内みたい。こりゃ、ひさびさに北白川へ行け!ってことかしら?(笑)次に見たときは「下鴨」になってましたw...
北白川



この記事に、nekotamaさんがコメントくれたので、ちょっと書き散らかしてみました(笑)

 ゼミ生のレポート採点をやっとこさ片付け、なんとか日付が変わる前に部屋にたどり着いた俺を待っていたのは、頼りなげな風情を見せる恋人の背中だった。

 喧嘩をしていた。
 原因は、今となっては思い出せないぐらい些細なことだ。
 二十歳をすぎても、三十路を越しても男なんて子供みたいなもんだ。他人から見たら、アホみたいなことで真剣に喧嘩が出来てしまう

「もうお前なんかと別れたるー!」
「ああ、こちらからも、お願いしたいね」
「ふんっホンマに別れたるからなー!! もう頼まれたって、フィールドワークにも同行したらへんからな!」
「そりゃよかった。もうお前の、迷推理に惑わされずにすむな」
「火村のあほーーーーー!!」

 とまあ、べたな捨て台詞で恋人がこの部屋を出て行ったのが丁度1ヶ月前。
 それから、一度も会うどころか、電話もしなければメールもしてなかった。
 気になってなかったと言えば嘘になる。というか、バリバリ気にしていた。
 講義中にふと思い出しては気がそれて、めざとい学生に怪訝な顔をされた。
 いつもなら手早く済ませられるレポート採点にこれほど手こずったのも、ともすれば、最後に見た恋人の泣きそうな顔が脳裏に浮かんで集中できなかったからだ。

 謝りに行こうと思っていた。
 喧嘩の原因がどちらかにあったかなんて、覚えてもいないけれど、このままじゃ俺の神経も参ってしまいそうだった。
 なにより、強情をはって自分からは折れることが出来ない恋人が、仕事に手もつかず、食事もまともにとれずに憔悴してるかもしれない……と思うと居ても立ってもいられなかった。(結構うぬぼれてますw)

………が、そんなときに限って、学会はあるわ、海外出張はあるわ、大阪府警に呼び出しくらうわ(何か違う)で、電話の一つも入れる余裕がなかったのだ。

 レポートをなんとか終わらせた今日こそは、電話をしよう。
 あるいは、多少非常識でも、おんぼろベンツにむち打って真夜中の高速を飛ばして会いに行こうか……そう思いながら帰って来たのだ



 その恋人……アリスが、目の前に振り向きもせず、ぽつんと背中を見せて座っている。

「アリス?」

 声をかけた。
 返事はない。
 
「アリス?」
「………」

 何度呼びかけても何の反応もないアリスに焦れて、肩に手を掛けようとしたとき、彼がぽつりと何かをつぶやいた。

「え?……なんだって?」
「神託」
「へ?……しんたく?」
「うん。神託が下ったんや」

 は?……何を言ってるんだ? 
 “しんたく”ってのはあれか? ○○信託銀行とか……いや、あれは下らないから、やっぱり、神託……恐山のイタコの……って、あれは神ではなくて死者の言葉か……

「あんな。俺、昨日から出版社の記念パーティで東京に行ってたん」

 いささかパニック気味に、アホなことをぐるぐる考えている俺をよそに、アリスは語り出した。俺に背をむけたまま……

「で、昼前にこっちに帰ってきたんやけど、その新幹線の中でな、本を読んでたんや。有栖川有栖の『火村英生に捧げる犯罪』」
「なんだよ、その著者とタイトル」
「うん。まあ細かいことは気にせんといて。 それはともかく……それがまた、めちゃくちゃ面白くて、夢中で読んでたんやけど、ちょっと疲れたな~って時に車内販売がきて、コーヒーでももらおうかと顔をあげたん」
「………」
「したらな、俺、窓際やってんけど、隣に座ってたにーちゃんが読んでた冊子が目に入って…………」
「……はいって?」
「うん……そこで神託が下った」
「………」
「北白川」
「え?」
「京都の観光ガイドやったみたい。丁度“北白川”のページやってん」
「へえ……」
「隣でずっと本読んでで。にーちゃんが何か読んでるのは気付いてたんやけど、本に夢中でちらりとも見いへんかった。それやのに、たまたま一息つきたいときに車内販売が来て、たまたま目を向けたら、北白川やった……おれは、これは神託やと思う」
「どういう神託だよ……」
「だから――」

 アリスは俺の言葉には返事はせず、一瞬だけ口をつぐんだ。肩が大きく動いて、深呼吸したのがわかる。

「だから、俺は、神の言葉に従うべく、京都で降りて、北白川にきたんや!!」

 アリスは叫ぶように最後のセリフを言うと、そのまま黙り込んだ。
 かたくなに向けている背が、いつにも増して薄く頼りなげに、よく見たらかすかに震えている。
 俺は、その背中に近づいて跪くと、そっと肩に手を置いた。
 びくりと大きく震える。それを合図のように、いささか乱暴に両肩をつかむとアリスを強引に振り向かせた。
 されるがままになりながらも、アリスはうつむいたまま俺の顔も見ない。
 無理に上げさせようとしたら、イヤイヤをするようにかぶりをふると、俺の肩口に顔を押しつけてきた。
 少し痩せたように思う体をぎゅっと抱きしめてやった。

「俺に会いにきてくれたのか?」

 耳元にそっとささやく。
 アリスはそれにもふるふると頭を振った。

「ちゃう!神託言うたやろ。俺は北白川にきたんや」
「でも、俺の部屋にいた」
「火村の部屋にきたんちゃうもん。昼はラーメン屋で食ったし、カフェでお茶したり、その辺散策したり、晩は1人でイタリアンや。ほんで、おしゃれなバーがあったから、そこでちょっと飲んで……ほんで、行くとこなくなったから、しゃあなく、ここにきたんや」

 小憎たらしいセリフを吐きながら、アリスは俺の首根っこにぶら下がるように抱きついてくる。

「そうか。じゃあ、今日は泊まっていけばいい」
「そのつもりや。いまから大阪になんか帰られへん」
「アリス」

 そこで初めて、アリスは顔を上げて俺を見た。

 1ヶ月ぶりに見つめ合う恋人の顔。
 ちょっと頬がこけて、なんとなく情けなげだ。目尻がほんの少し赤く染まっている。泣いていた……訳ではないだろう。ふらりと入ったというバーでの酒が過ぎたか。それでも俺には、泣いた後の名残のように思えて切なくなった。

「アリス……」
「なに?」
「キスしていいか?」

 俺のセリフに、アリスは声を上げて笑った。
 そして、再びしがみついてくると、こくりを頷く。

 俺は、そっと彼の身体を離すと、触れるだけのようキスを彼の唇に落とした。








 俺は神は信じない。信じないが、今日ばかりはアリスに託宣を下したという神に感謝した。



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category: Alice

コメント

やった~~!!
快さん、素敵なお話を有難うございます!
アホな妄想を書いて良かった♪

切なくて、甘くて、アリスが可愛いのに、潔くって、最高~!!
あ、火村も可愛い(笑)

やっぱり快さんの二人は好きです♪

URL | nekotama #-

2008/09/30 18:12 * edit *

nekotamaさん

さっそくのコメントいただいててありがとう~
(レスが遅くなった^^;)

ネタを囁いてくれてありがとう(笑)

なんか、高校生カップルのようやね(笑)

URL | 快 #JxT2ZqZE

2008/10/01 09:47 * edit *

やった~2♪

なんて可愛いんだ、アリス!!
そしてヘタレだ、火村(笑)

こんな情けない男とは別れなさいって言いたくなったけど、なんせ相愛のバカップルやもんねw

「俺に会いにきてくれたのか?」ちゅう火村の問いに、「ちゃう!」と答えたアリスが特に、意地っ張りのくせに切なくて素敵♪
快さんアリスはやっぱ可愛いw(アリシストの戯言(笑))

nekoさん、快さんにネタ振りをありがと!!グッジョブ♪

URL | 織田 #SVqLzQOU

2008/10/02 19:06 * edit *

織田しゃん

アリシスト様に喜んでいただけて光栄ですw
でも、私はヒムラー・・・・たぶんorz

どうも私が書くと、どちらも素直じゃない。
ので、すぐけんかします(笑)

URL | 快 #JxT2ZqZE

2008/10/02 23:20 * edit *

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